デルタヘッジとは — コールを買って先物で打ち消すと何が起きるか(ガンマトレード)
コールを買うと、日経平均が上がれば得、下がれば損をします。 この「上がるか下がるか」のリスクだけを、先物の売りで打ち消すのがデルタヘッジです。 打ち消したあとに残るのは、「どれだけ動くか」による損益です。 これを狙う取引をガンマトレードと呼びます。
まず、デルタとは
デルタは「日経平均が1円動いたとき、コールの値段が何円動くか」です。 現値に近いコールのデルタはだいたい0.5で、日経平均が100円上がるとコールは約50円上がります。 つまりコール1枚を持つのは、先物を半分持っているのと同じです。
そこで、先物を半分だけ売れば、上がっても下がっても損益がほぼ動かない状態になります。 日経225オプション(ラージ)1枚の半分は、日経225mini(ラージの10分の1)の5枚に当たります。
例: コールを1枚買って、2日間デルタヘッジする
2026年11月限(残り42日)の68,250円コールを使います。今日の清算値段は2,505で、日経平均は68,309円です (この値段から逆算したIVは26.8%)。 日経平均が1日目から2日目に1,000円上がり、3日目に元に戻ったとします(IVは変わらないと仮定)。
| 日経平均 | コールの値段 | コールのデルタ | その日の操作 | 先物の持ち | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1日目(買った日) | 68,309円 | 2,505 | 0.52 | コールを1枚買い、miniを5枚売る | mini 5枚売り |
| 2日目 | 69,309円(+1,000) | 3,029 | 0.59 | デルタが増えたので、miniをさらに1枚売る(高いところで売る) | mini 6枚売り |
| 3日目 | 68,309円(−1,000) | 2,445 | 0.52 | デルタが戻ったので、miniを1枚買い戻す(安いところで買う) | mini 5枚売り |
ポイントは2日目と3日目の操作です。上がったときにデルタが増えるので先物を売り足し、 戻ったときにデルタが減るので買い戻します。 ヘッジを続けるだけで、自然に「高く売って安く買う」ことになります。
| 2日後(日経平均が元の68,309円に戻ったとき) | 損益 |
|---|---|
| コール(1枚・ラージ) | -59,609円 |
| 先物(mini)の売買 | +100,000円 |
| 合計 | +40,391円 |
日経平均は元の値段に戻ったのに、先物の売買で+100,000円が残りました。 一方、コール自体は2日分の時間が過ぎたぶん-59,609円になっています。 ヘッジをしなかった場合は、上がって戻っても、2日間まったく動かなかった場合と同じ-59,609円で終わります。 ヘッジしたことで、動いた分が+100,000円の利益として残ったわけです。
つまりデルタヘッジしたコールの買いは、方向には関係なく「動けば得、動かなければ損」という形に変わります。 下がって戻った場合も、下がったところで買い戻し、戻ったところで売り直すので、同じように利益が残ります。
参考までに、直近60営業日で日経平均の終値が前日から1,000円以上動いた日は60日中20日、1日の平均の変化は878円でした。
この性質の名前: ガンマとセータ
- ガンマ — 日経平均が動いたときに、デルタがどれだけ変わるか。 上の例で、2日目にデルタが0.52から0.59に増えたのがガンマの働きです。 ガンマがあるから、ヘッジするたびに「高く売って安く買う」が起きます
- セータ — 時間が1日過ぎるごとに、オプションの値段がどれだけ減るか。 動かなかった場合の-59,609円がこれです
デルタヘッジしたコールの買いは、デルタ(方向)を消して、ガンマ(動きの大きさ)を取り、その代わりにセータ(時間)を払う取引です。 1回の動きで残る利益は、おおよそ「½ × ガンマ × 動いた幅の2乗」で、動いた幅が2倍になると利益は4倍になります。
コールを売ってデルタヘッジすると: すべて逆になる
コールを1枚売り、先物(mini)を5枚買ってデルタを打ち消すと、損益はちょうど反対になります。
- 上がるとデルタのずれを埋めるために先物を買い足し、戻ると売る。高く買って安く売ることになります
- 上の例と同じ動きなら、合計は-40,391円
- 2日間動かなければ、時間が過ぎた分の+59,609円を受け取れます
つまり「動かなければ得、大きく動けば損」です。証券会社などのディーラーはこの側に立つことが多く、 そのヘッジの売買が相場の動きを大きくすることがあります。 当サイトでは、その向きをガンマエクスポージャーとして毎日推定しています。
結局、どちらが得なのか — 「デルタヘッジは儲からない」と言われる理由
上の例で分かるとおり、コールを買ってデルタヘッジしたときの損益は 「実際にどれだけ動いたか」と「コールを買った値段(IV)が見込んでいた動きの大きさ」の比べ合いで決まります。 IVが見込んだより大きく動けば買った側、小さければ売った側が得をします。
当サイトの日経VIのページで、各日の日経VIとその後20営業日に実際に動いた大きさを比べると、 896営業日のうち688日で、日経VIのほうが大きく、差は平均2.4ポイントでした。 オプションは平均すると、実際の動きより少し高い値段がついていたことになります。 買ってデルタヘッジする側が「儲からない」と言われるのはこのためです。
ただし、実際の動きがIVを大きく上回った時期もあり、そこでは買ってヘッジした側が利益を上げています。 売ってヘッジする側は平均では有利でも、急変の局面で大きな損失を抱えます。 どちらかが常に有利ということはありません。
実際にやるときの論点
- いつヘッジし直すか — 一定の時間ごと、デルタが一定量ずれたとき、などのやり方があります。 こまめにするほど取りこぼしは減りますが、先物の手数料と売買の差(スプレッド)が増えます
- 先物の単位 — ラージのオプション1枚に対し、miniなら10分の1単位、マイクロなら100分の1単位で合わせられます
- IVの変化 — 持っている間にIVが下がると、ヘッジとは別にコールの値段が下がります。上の例ではIVを一定にしています
- コールとプットを両方買う形 — 現値のコールとプットを1枚ずつ買う(ストラドル)と、 最初からデルタがほぼゼロなので、先物なしで同じ性質から始められます
上の図は、ヘッジをしない場合のコールの買いの損益です。 計算はブラック・ショールズ式で、IV・金利は一定、手数料は含みません。
関連: 戦略一覧 ・ ストラドル・ストラングル
始める前に
- 売りを含む戦略は証拠金が必要です。必要額は取引所の証拠金制度(VaR方式)で日々変わり、 相場が荒れると急に増えることがあります
- 清算値段は理論値です。実際には売値と買値の差(スプレッド)があり、 遠い行使価格ほど取引が少なく、思った値段で約定しないことがあります
- SQをまたぐと自動で清算されます。SQ値は寄り付きの値段から決まり、 前日の終値から大きく離れることがあります(幻のSQ)
- このページは仕組みとデータの説明で、特定の取引を勧めるものではありません。