ガンマエクスポージャーの計算で、いちばん弱いのは値動きの式ではありません。 「証券会社(ディーラー)がどちら向きに持っているか」が公表されていないことです。 ここを埋める方法として使われるのが、約定を買い仕掛けと売り仕掛けに分ける Lee-Readyアルゴリズムです。このページでは、その考え方と、 当サイトがなぜそれを使っていないのかを説明します。
JPXが公表する建玉は、行使価格ごとに何枚残っているかだけです。 1枚の建玉は必ず買い手と売り手がいて成り立ちますが、 そのどちらが証券会社かは書かれていません。
ところがガンマの向きは、まさにそこで決まります。 ディーラーがコールを買って持っていれば、値動きを抑える売買をします。 売って持っていれば、値動きを増幅する売買になります。 同じ建玉でも、向きが逆なら結論が正反対になります。 → ガンマエクスポージャーとは
1991年にチャールズ・リーとマーク・レディが示した、 約定を「買い手が仕掛けたか」「売り手が仕掛けたか」に分ける手順です。 株式市場の研究で広く使われ、今もオプションの需給推定の土台になっています。
| 例 | 買い気配 | 売り気配 | 約定値段 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 300 | 310 | 310 | 買い仕掛け(中値305より上) |
| 2 | 300 | 310 | 300 | 売り仕掛け(中値305より下) |
| 3 | 300 | 310 | 305 | 直前の約定が300なら買い仕掛け、310なら売り仕掛け |
仕掛けた側(成行で相手の気配を取りにいった側)は、多くの場合顧客です。 気配を出して待っていた側は、マーケットメイクをしている証券会社であることが多い。 そこで「仕掛けた側の反対がディーラー」と考えると、 行使価格ごとにディーラーがどちら向きに持っているかを推定できます。
ここが実務上の壁です。Lee-Readyには約定1件ごとの値段と、その瞬間の売り気配・買い気配が要ります。 日次の建玉や清算値段では計算できません。
| データ | 入手 | Lee-Readyに使えるか |
|---|---|---|
| 建玉残高(行使価格別・日次) | JPXが無料公開 | 量は分かるが向きは分からない |
| 清算値段・行使価格別IV(日次) | JPXが無料公開 | ガンマの計算には使えるが、向きは分からない |
| 取引参加者別の取引高(日次) | JPXが無料公開 | 会社名は分かるが売りか買いかは含まれない |
| 約定・気配のティック | 取引所の有償配信、または情報端末 | これが必要 |
つまり、無料で公開されているデータだけではLee-Readyは実行できません。 公開ファイルの一覧は公式データはどこにあるかにまとめています。
当サイトのガンマエクスポージャーは、 「ディーラーはコールを買い持ち・プットを売り持ち」という一律の仮定で計算しています。 広く使われている前提ですが、Lee-Readyのような実測に基づくものではありません。 トップページと解説ページで「推定値」と書いているのはこのためです。
この仮定が外れる場面もあります。たとえば個人や機関投資家が上のコールを買い越していれば、 ディーラーはそのコールを売っていることになり、仮定とは逆になります。 そのときガンマの符号は反転します。符号が反対になれば、相場を抑える/増幅するの結論も反対です。 ここは、公開データだけでは検証できない部分として残ります。
符号付きの出来高をそのまま積み上げるやり方には、弱点があります。 立会外(J-NET)の取引はティックに出てこないため、 その分で作られた建玉が抜け落ちます。
そこで役割を分けるほうが筋がよくなります。
この形なら、建玉の裏付けを保ったまま向きを推定できます。 ただし「仕掛けた側=顧客」という仮定は残ります。 ディーラーが自分から仕掛けることも、機関投資家が指値で待つこともあるためです。
10月2日のデータでは、日経225オプション(ラージ)の出来高は55,249枚(プット40,387枚・コール14,862枚)、JPXが公開している直近3限月の建玉は前日から+9,028枚変化しました(増加した行使価格 198本・減少した行使価格 102本)。
建玉の増減は出来高の一部でしか起きません。新規どうしの売買なら建玉は増え、 決済どうしなら減り、片方ずつなら変わらないためです。 出来高に対して建玉がどれだけ動いたかを見ると、その日の売買が 新しくポジションを作る動きだったのか、閉じる動きだったのかの目安になります。
関連: ガンマエクスポージャーとは ・ デルタヘッジで何が起きるか ・ 公式データはどこにあるか ・ 手口の見方