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日経225先物の手口を見ていると、毎日同じ会社名が並びます。ABNクリアリン証券、ソシエテG証券、 バークレイズ証券。そして週次の建玉ではHSBC証券が常に売り越し、野村証券が常に買い越しです。
「この会社が売っているから下がる」と読みたくなりますが、それはほぼ確実に外れます。 このページでは、直近52週の実測値をもとに各社がどういう性格を持っているのか、 そして手口から何が読めて何が読めないのかを整理します。
JPXは2種類のデータを出しています。混同すると話が合わなくなります。
| 日次の手口 | 週次の建玉 | |
|---|---|---|
| 中身 | その日の取引高 | 週末時点のネット持ち高 |
| 方向 | 分からない(買いと売りの合計) | 分かる(買い越し / 売り越し) |
| 公表 | 当日17:45頃 | 毎週第1営業日 |
| 使い道 | 誰が主戦場にいるか | 誰がどちら側にいるか |
日次の手口に方向はありません。「ABNクリアリンが6,352枚」は、 買ったのか売ったのかを一切含みません。ここを取り違えている解説をよく見かけます。
2026年9月1日の日経225先物(ラージ)の取引高上位は次のとおりでした。
| 参加者 | 取引高 | シェア |
|---|---|---|
| ABNクリアリン証券 | 6,352枚 | 23.7% |
| ソシエテG証券 | 6,099枚 | 22.7% |
| バークレイズ証券 | 3,700枚 | 13.8% |
| サスケハナ・ホンコン | 1,290枚 | 4.8% |
この3社で6割を占めます。日によって順番は入れ替わりますが、顔ぶれはほぼ変わりません。
なぜこの3社なのか。いずれも清算・執行を請け負う立場だからです。 海外のヘッジファンドや機関投資家が日本の先物を売買するとき、 自分で取引参加者資格を持たずに、これらの会社を通します。 つまり表示されているのは、その会社自身の相場観ではなく、背後にいる無数の顧客の注文の合計です。
ABNクリアリン証券は特にこの性格が強く、ミニでは32.6%と3分の1を占めます。 一方で、同社のミニのネット建玉は52週中27週が売り越し・25週が買い越しで、 同符号率は52%。ほぼコイン投げです。方向を読む材料にはなりません。
ここが最も重要な事実です。直近52週(2025年9月〜2026年8月)の日経225先物ラージについて、 各社のネット建玉が毎週どちら側にあったかを数えました。
| 参加者 | 平均ネット建玉 | 同じ符号だった週 |
|---|---|---|
| HSBC証券 | −33,012枚 | 52週すべて売り越し |
| 野村証券 | +20,759枚 | 52週すべて買い越し |
| モルガンMUFG証券 | −10,759枚 | 96%が売り越し |
| バークレイズ証券 | +7,572枚 | 98%が買い越し |
| ゴールドマン証券 | −6,578枚 | 92%が売り越し |
| ソシエテG証券 | +6,574枚 | 96%が買い越し |
| みずほ証券 | −6,237枚 | 100%が売り越し |
| 三菱UFJ証券 | −5,600枚 | 52週すべて売り越し |
| UBS証券 | +4,901枚 | 52週すべて買い越し |
| シティグループ証券 | +4,888枚 | 52週すべて買い越し |
| SMBC日興証券 | +3,972枚 | 52週すべて買い越し |
| ドイツ証券 | +2,125枚 | 52週すべて買い越し |
この1年、日経平均は大きく上下しています。それでも上の会社は一度も向きを変えていません。 相場観でポジションを取っているなら、こうはなりません。
理由は業務の形にあります。仕組債やデリバティブを顧客に売った側は、 そのリスクを打ち消すために反対のポジションを持ち続けます。 現物株を大量に保有していれば、先物でヘッジを掛けたままになります。 裁定取引をしていれば、現物と先物で常に反対側を持ちます。 いずれも相場観とは無関係に、恒常的に同じ方向のポジションを生みます。
したがって「HSBCが売り越しだから弱気」と読むと、1年間ずっと外し続けます。 見るべきはゼロとの比較ではなく、その会社自身の平常値からのズレです。 平常が−33,000枚の会社が−5,000枚になっていれば、符号は売り越しのままでも、 実質は28,000枚を買い戻したことになります。
同じ52週を、日経225miniで集計すると景色が変わります。
| 参加者 | 平均ネット建玉 | 同符号率 |
|---|---|---|
| バークレイズ証券 | −11,806枚 | 73% |
| BNPパリバ証券 | −8,852枚 | 73% |
| みずほ証券 | +6,685枚 | 62% |
| ソシエテG証券 | +4,602枚 | 60% |
| JPモルガン証券 | +2,580枚 | 50% |
| ABNクリアリン証券 | +1,009枚 | 52% |
ラージでは100%だった会社が、ミニでは50〜73%です。ミニのポジションは動きます。
さらに面白いのは、同じ会社がラージとミニで逆を向いているケースがあることです。
ラージとミニを合算して「この会社は買い越し」と語ると、この構造が消えます。 当サイトが商品別に分けて表示しているのはこのためです。
ミニの上位には、ラージには現れない名前が並びます。日産証券、SBI証券、松井証券、楽天証券、 三菱UFJ eスマート証券、インタラクティブ証券。いずれも個人投資家向けのブローカーです。
9月1日のミニ取引高でも、SBI証券5.9%、松井証券4.1%、楽天証券3.7%が上位に入っています。 ラージの同じ日の上位10社には、これらの名前はありません。
つまりラージは機関投資家、ミニは個人の比重が高いという住み分けが、手口にそのまま出ています。 Put/Callレシオがラージ平均1.57・ミニ平均0.91と大きく違うのも、同じ理由です (→ Put/Callレシオとは)。
読めること
読めないこと
手口はフローの指紋であって、予想ではありません。 そう割り切ったうえで平常値との差を見ると、はじめて使える材料になります。
当サイトでは、日経ダッシュボードに日次の取引高上位と週次の参加者別建玉を、 データ分析ツールに会社ごとの時系列を掲載しています。いずれも毎営業日更新です。 基本的な読み方は 先物の手口の見方 にまとめています。
データを実際の取引に使うには
日経225オプション・先物の売買には、証券会社の総合口座に加えて 先物・オプション取引口座の開設が必要です(無料・ネット完結)。 建玉やPCRを見て「この水準で張ってみたい」と思ったときに、 口座がないと動けないため、先に用意しておくのが一般的です。
証券会社の比較や申込みの流れは 始め方ガイドにまとめています。